用語
図 5-1 は、一般的なポート タイプと Cisco Unified CCX とポートがどのようにマッピングされるかを示した図です。
図 5-1 コール センターのポート タイプ
コール センターのサイジングでは、ポート タイプは次のように差別化されています。
• ゲートウェイまたは PSTN トランク ポート :PSTN から発信されるコールを処理します。これらのポートは Cisco Unified CCX とは別に購入します。
• キュー ポート :コールを利用可能なエージェントに転送する前に、コールをキューに入れる(利用可能なエージェントがない場合)IVR ポートです。これらのポートは、Cisco Unified CCX Standard または Enhanced に無料で同梱されていますが、Cisco Unified CCX サーバのキャパシティ プランニングに応じて適切にサイジングする必要があります。詳細については、Cisco Unified CCX Configuration and Ordering Tool を参照してください。
• IVR ポート :フル機能の IVR ポートで、スタンドアロンの Cisco Unified IP IVR 製品のすべての機能を備えています。ただし、Cisco Unified CCX IVR ポートには Cisco Unified CCX Premium が必要であり、Cisco Intelligent Contact Management Enterprise(Cisco Unified ICME)との統合はサポートされません。
Automatic Speech Recognition(ASR; 自動音声認識)、Text-To-Speech(TTS)、電子メール通知、Web サーバまたはクライアント機能、およびデータベース操作といった追加のサポート機能が必要な場合は、Premium パッケージを購入する必要があります。ポート ライセンスに付属するシート ライセンスでは数が足りない場合、IVR ポート ライセンスのシートを追加購入することもできます。
システム アーキテクトの最終目標は、Cisco Unified CCX システムをプロビジョニングするのに最適な IVR ポートの数とタイプを決定することです。しかし、図 5-1 で示すように、Cisco Unified CCX のアーキテクチャは、この例に示す TDM コール センターとは設定が少し異なります。IVR ポートとキュー ポート(P&C ポートも)が 1 つの論理 CTI ポートに統合されている点です。このため、このマニュアルのコール サイジングの手法では、トランク、IVR、およびキュー ポートを計算します。この章では、 IVR ポート という用語は、今後、キュー ポートと IVR ポートを組み合わせたものを表します(いずれもフルサービスの P&C ポート)。
必要な事前情報
システムの設計者には、次の事項を実行するためのサイジングに関する文書を作成することをお勧めします。
• Cisco Unified CCX サーバに関する事前の設定情報を調べる。
• システムのゲートウェイをサイジングする。
コール センターのサイズを決定するために、次の質問に対する回答を特定します。
• 必要な IVR ポートの数
• 必要な PSTN ゲートウェイ トランク ポートの数
• 着信コールに応答するエージェントの数
上記の質問に正しく回答するには、 表 5-1 に示すサイジング メトリックと情報が必要になります。
表 5-1 コール センターのサイジング メトリック
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平均処理時間(AHT; Average Handle Time) |
コールの平均接続時間(通話時間)とアフターコール ワーク時間の合計。これは発信側が電話を切った後のラップアップ時間です。 |
平均 IVR ポート使用時間 |
Cisco Unified CCX スクリプトのプロンプト再生およびメニュー ナビゲーションまたはそのいずれか(ある場合)の合計時間。これには、エージェントが利用可能になるまで発信側がキューで待機するのに要したキューイング時間は含まれません。キューイング時間は、図 5-2 で示すように Erlang-C を使用して自動的に計算されます。 |
エージェントのサービス レベルの最終目標 |
特定の秒数内でエージェントが回答するコールのパーセンテージ。 |
最頻時発呼数(BHCA) |
最頻時に受信するコールの平均数。 |
PSTN までのゲートウェイ ポートのサービス グレード(ブロックのパーセンテージ) |
総 BHCA に対するビジー トーンを受信したコールのパーセンテージ(利用可能なゲートウェイ トランクなし)。 |
表 5-1 に示したメトリックはいずれも基本的なコール サイジングのメトリックです。この情報を入手したら、次の URL から入手可能な IPCC Resource Calculator を使用すると、ゲートウェイ トランク ポート、IVR ポート、およびエージェントのそれぞれの数を計算できます。 http://tools.cisco.com/partner/ipccal/index.htm
IPC Resource Calculator では、エージェントのサイジングに Erlang C を使用し、IVR ポートのサイジングには Erlang B を使用します。このサイジング プロセスの出力により、Cisco Unified CCX システムを適切にサイジングするための、ゲートウェイ トランク ポートおよび IVR ポートの総数、エージェントの総数が提供されます。
IP コール センターのサイジング プロセスの概要については、図 5-2 を参照してください。また、IVR ポートと Cisco Unified CCX エージェントの両方のサイジング情報の詳細については、「コール センターのサイジングにおけるリソース 要件のプランニング」 のセクションを参照してください。
(注) 設計対象のシステムが、既存の ACD からの置き換えであるか、インストール済みの Cisco Unified CCX または Cisco Unified IP IVR システムの拡張である場合、既存システムで蓄積したこれまでのレポート情報を上記のメトリックに達するように活用できる場合があります。
加えて、コール センターのセルフサービス指向が強い場合、コールのサイジングに関する考慮事項が多岐にわたる場合があります。
コール センターのサイジングにおける基本的な設計上の考慮事項
図 5-2 は、コール センターのサイジングにおける基本的な手順と設計上の考慮事項です。
図 5-2 Cisco Unified CCX 設計プロセス - コール センターのサイジング
図 5-2 は、コール サイジングの設計上の考慮事項を全体像で示した図です。コール センターのサイジングに関する設計プロセスの詳細については、次の URL からオンラインで入手可能な『 Cisco Unified Contact Center Enterprise Solution Reference Network Design Guide 』で、コール センターのリソース サイジングに関するセクションを参照してください。
http://www.cisco.com/go/ucsrnd
Cisco Unified CCE にも同様の基本的なコール センターのサイジング上の考慮事項および手順があり、これらは Cisco Unified CCX のさらに小規模なコンタクト センターのサイジングにも活用できます。このコール サイジング手法では、総 BHCA をサポートするための最小限の IVR ポート数がわかります。
さらに、コール センターのサイジング計算には、Cisco Unified CCX に特有の次のような設計上の考慮事項を含める必要があります。
• 少なくとも既存システムを置き換えるのに十分なキャパシティを計画します。交換するシステムには、最低でもこれまでのシステムと同程度のパフォーマンスが必要です。
• コール センターをサイジングするためのすべての Erlang(C および B)計算の完了後は、キュー時間またはエージェントのすべての変更が Cisco Unified CCX ソリューションで必要なトランクや IVR ポートの合計数に影響します。
• エージェント プールのサイズを増やすと、平均待ち時間やキューに入れられたコールのパーセンテージがほんの少し変化しただけでも、ゲートウェイ トランクおよび IVR ポートの必要数に影響します。
• コール センターの計算をすべて実行する場合でも、予測が不可能でしかも Cisco Unified CCX システムに必要なポート数に影響する事項がいくつかあります。たとえば、1 つ以上のエージェントのコールが正常でない場合、各コールに対するポート カウントとキュー時間に影響します。2 エージェントのコールが正常でないだけで、ポート カウントが 12% 以上増加する可能性があります。これはシステムの価格に影響し、予測していなかった場合は、コール センターは発信者の要件を満たすことができなくなります。コール センターの適切なリソース サイジングは Cisco Unified CCX システムの効果的な設計に不可欠です。
(注) Cisco Unified CCX システムのすべての制限事項が同時に利用可能になるわけではありません。
コール サイジング情報がすべて利用可能な場合は、次の手順は、Cisco Unified CCX のサイジング制限事項をコール センターの要件に適用することです。次の手順用として、次の Web サイトからオンラインで入手可能な Cisco Unified CCX Configuration and Ordering Tool を使用します。 http://www.cisco.com/en/US/partner/products/sw/custcosw/ps1846/prod_how_to_order.html
コール センターのサイジングにおけるリソース 要件のプランニング
このセクションでは、リソース要件のプランニングに役立てるために、25 のエージェントを使用する Cisco Unified CCX Standard アプリケーションのサイジング方法について説明します。
25 エージェントを使用する Cisco Unified CCX Standard アプリケーションのサイジング例
この例は、包括的なコンタクト センターの設計を目的としたものではありません。しかし、BHCA、AHT、およびサービス レベルなどのメトリックの変化がエージェントのプロビジョニングにどのように影響を及ぼすか示しています。
次の情報は、25 エージェントを使用する、この Cisco Unified CCX Standard の例に適用されます。
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最頻時発呼数(BHCA) |
60 分間に 800 コール |
サービス レベル目標 |
15 秒以内にコールの 90% が応答される |
平均処理時間(AHT; Average Handle Time) |
90 秒 • 平均通話時間 = 90 秒 • ラップアップ時間 = 0 秒 |
放棄までの待ち時間 |
120 秒 |
PSTN までのゲートウェイ ポートのサービス グレード(ブロックのパーセンテージ) |
1% (0.01) |
http://tools.cisco.com/partner/ipccal/index.htm で入手可能な IPC Resource Calculator を使用して計算すると、このシステムでは 25 のエージェントが必要があることが判別できます。Cisco Unified CCX Configuration and Ordering Tool をチェックするということは、これらすべてのパラメータを単一サーバの Cisco Unified CCX システム内に収めることを意味します。
図 5-3 は、基本的な IPC Standard Resource Calculator の表示例を示します。
図 5-3 IPC Standard Resource Calculator の基本的な例
また、IPC Resource Calculator は、コール処理(プロンプトとコレクト)およびキューイングに必要な IVR ポートの数を計算するために Erlang B および C を使用します。この例は、すべての Cisco Unified CCX パッケージで利用可能なデフォルトの icd.aef スクリプト ロジックです。図 5-4 は、アプリケーション開発者がさまざまな遅延をスクリプト ロジックを使用してスクリプトに挿入する方法を示しています。これらの遅延は、Average Call Treatment Time(IVR)(コールの平均処理時間)の入力として IPC Resource Calculator に含める必要があります。
図 5-4 Cisco Unified CCX におけるアプリケーション処理時間
次に、例で示した Cisco Unified CCX アプリケーションの IVR ポートを計算する詳しい手順を示します。
ステップ 1 IVR コール処理機能を扱うのに必要な IVR ポートの数を次のように計算します。
a. Cisco Unified CCX スクリプトで処理されるコールの平均時間を推計を示します。ここでは、初期化コールがアプリケーションに着信してからコールがキューイングされる時間までを推計します。この値がコール処理時間(CTT、平均 IVR 遅延とも呼びます)です。例では、デフォルトの icd.aef スクリプトを使用しており、この値はウェルカム プロンプトが再生される時間になります。この特定の Cisco Unified CCX アプリケーションが使用するウェルカム プロンプトは、2 秒と推計されました(発信者のセルフサービス用に非常に長いプロンプト/コレクト シーケンスを使用すると CTT が大幅に長くなることに注意してください)。
b. 次に、20 秒の CTT(平均 IVR 遅延)を IPC Resource Calculator に入力します。この例では、コール処理に 10 の IVR ポートが必要となることに注意してください。
ステップ 2 キューイング機能を処理するために必要な IVR ポートの数を計算します。
今回、この IPC Resource Calculator は先ほど入力した数値ですでに計算済みで、キューイングには 6 つの IVR ポートが必要であるという値が得られました。
ステップ 3 必要な IVR ポートの総数を計算します。
IPC Resource Calculator は、キューイング、コール処理、およびセルフサービスで必要なすべての IVR ポート数を自動的に合計します(拡張 IPC Resource Calculator を使用)。この例では、必要な IVR ポートの総数は 15 です。
この時点で、IPC Resource Calculator は、エージェントと IVR ポートの必要数をサポートするために必要なゲートウェイ音声トランクの数を決定している点に注意してください。この例では、36 の PSTN トランク(DS0)が必要です。
図 5-5 標準の Resource Calculator のコール処理例
BHCA、CCT、およびサービス レベルの変更がコール センターで必要となるポートおよびエージェントの総数に影響することに注意してください。それぞれのコール処理時間に増減があると、コール センターの規模が大きいほど、ポート数が大幅に影響を受けます。
ゲートウェイのサイジングのガイドラインについては、 http://www.cisco.com/go/ucsrnd にある『 Cisco IP Telephony Solution Reference Network Design 』ドキュメントを参照してください。