アプリケーション認識型ルーティングについて
アプリケーション認識型ルーティングは、Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス間のデータプレーントンネルのネットワークとパスの特性を追跡し、収集した情報を使用してデータトラフィックの最適なパスを計算します。対象となる特性には、パケット損失、遅延、ジッターなどがあります。ルート プレフィックス、メトリック、リンクステート情報、Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイスでのルート削除など、標準のルーティングプロトコルで使用されるパス選択の要因以外を考慮する機能があるため、企業に次のような多くの利点をもたらします。
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通常のネットワーク運用の場合は、ネットワークを経由するアプリケーション データ トラフィックのパスを最適化できます。アプリケーションの SLA で定義されたパケット損失、遅延、ジッターに対し、必要なレベルを満たせるようにする WAN リンクにパスを誘導することにより、これを実現します。
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ネットワークの停止またはソフト障害が発生した場合は、パフォーマンスの低下を最小限に抑えることができます。ネットワークとパスの状況をリアルタイムなアプリケーション認識型ルーティングで追跡するので、パフォーマンスの問題をすぐに明らかにし、利用できる最善なパスにデータトラフィックをリダイレクトする戦略を自動的にアクティブ化させます。ネットワークがソフト障害の状態から回復すると、アプリケーション認識型ルーティングはデータトラフィックパスを自動的に再調整します。
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データトラフィックをより効率的にロードバランシングできるため、ネットワークコストを削減できます。
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WAN をアップグレードせずに、アプリケーションのパフォーマンスを向上させることができます。
各 Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイスは最大 8 つの TLOC をサポートするので、1 つの Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイスを最大 8 つの異なる WAN ネットワークに接続できます。 この機能により、アプリケーション トラフィックにパケット損失と遅延に関するさまざまなニーズがあっても、パスのカスタマイズができるのです。
マルチキャストプロトコルに対応したアプリケーション認識型ルーティング
機能 |
リリース情報 |
説明 |
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マルチキャストに対応したアプリケーション認識型ルーティング |
Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN リリース 17.3.1a Cisco vManage リリース 20.3.1 |
これは、送信元と宛先、プロトコル照合、および SLA 要件に基づいて、Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイスのマルチキャストトラフィックに、アプリケーション認識型ルーティングポリシーを設定できるようにする機能です。 |
Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN リリース 17.3.1a 以降、アプリケーション認識型ルーティングは、Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス上のオーバーレイ マルチキャスト トラフィックをサポートしています。これ以前のリリースでは、アプリケーション ルート ポリシーはユニキャストトラフィックにしか対応していません。
Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイスは、グループアドレスに基づいてマルチキャストトラフィックを分類し、SLA クラスを設定します。グループアドレスには、送信元 IP、宛先 IP、送信元プレフィックス、および宛先プレフィックスを指定できます。フォワーディングプレーンでは、グループアドレスのトラフィックは、SLA 要件を満たす TLOC パスのみを使用する必要があります。グループのパス選択は、優先カラー、バックアップカラー、またはデフォルトアクションに基づいて実行できます。
マルチキャストプロトコルに関する制約事項
Cisco Catalyst SD-WAN Application Intelligence Engine(SAIE)フローを使用する Network-Based Application Recognition(NBAR)は、マルチキャストではサポートされていません。
(注) |
Cisco vManage リリース 20.7.1 以前のリリースでは、SAIE フローはディープ パケット インスペクション(DPI)フローと呼ばれていました。 |
アプリケーション認識型ルーティングのコンポーネント
Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN アプリケーション認識型ルーティングのソリューションは、次の 3 つの要素で構成されています。
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識別:目的のアプリケーションを定義してから、アプリケーションを特定の SLA 要件にマッピングする一元管理型データポリシーを作成します。パケットのレイヤ 3 ヘッダーとレイヤ 4 ヘッダー(送信元と宛先のプレフィックス、ポート、プロトコル、DSCP フィールドなど)を照合して、目的のデータトラフィックを選び出します。すべての一元管理型データポリシーと同様に、Cisco Catalyst SD-WAN コントローラ で設定すると、適切な Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイスに渡されます。
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モニタリングと測定:Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN ソフトウェアでは BFD パケットを使用して、デバイス間のデータプレーントンネル上のデータトラフィックを継続的にモニターし、トンネルのパフォーマンス特性を定期的に測定します。パフォーマンスを測定するために、Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイスはトンネルでのトラフィック損失を探し、トンネルを通過するトラフィックの片道時間と往復時間を調べることで遅延を測定します。これらの測定値によって、最適ではないデータトラフィックの状態が示されることもあります。
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特定のトランスポートトンネルへのアプリケーション トラフィックのマッピング:最後の手順では、アプリケーションのデータトラフィックを、そのアプリケーションに必要なパフォーマンスを提供するデータプレーントンネルにマッピングします。マッピングの決定は、WAN 接続で実行された測定値から計算されたベストパス基準と、アプリケーション認識型ルーティングに固有のポリシーで指定された制約という 2 つの基準に基づいて行われます。
レイヤ 7 アプリケーション自体に基づいてデータポリシーを作成するには、一元管理型データポリシーを使用して Cisco Catalyst SD-WAN アプリケーション インテリジェンス エンジン(SAIE)フローを設定します。SAIE フローを使用すると、リモート TLOC、リモート TLOC、あるいはその両方に基づいて、トラフィックを特定のトンネルに転送できます。トンネルへのトラフィック転送は、SLA クラスに基づいて行うことはできません。
(注) |
Cisco vManage リリース 20.7.1 以前のリリースでは、SAIE フローはディープ パケット インスペクション(DPI)フローと呼ばれていました。 |
SLA クラス
機能 |
リリース情報 |
説明 |
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SLA クラスのサポート |
Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN リリース 17.2.1r |
Cisco SD-WAN コントローラ で最大 8 つの SLA クラスを設定できます。この機能を使用すると、アプリケーション認識型ルーティングポリシーに追加のオプションを設定できます。 |
各ポリシーで 6 つの SLA クラスのサポート |
Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN リリース 17.3.1a Cisco vManage リリース 20.3.1 |
Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイスのポリシーごとに、最大 6 つの SLA クラスを設定できます。この機能拡張により、アプリケーション認識型ルーティングポリシーに追加のオプションを設定できます。 |
SLA クラスのサポートの拡張機能 |
Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN リリース 17.6.1a Cisco vManage リリース 20.6.1 |
Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイスで最大 16 の SLA クラスをサポートするための拡張機能です。 |
アプリケーション認識型ルーティングおよびデータポリシーの SLA 優先色 |
Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN リリース 17.6.1a Cisco vManage リリース 20.6.1 |
アプリケーション認識型ルーティングポリシーとデータポリシーの両方が設定されている場合、SLA 要件を基に優先色を選択するためのさまざまな動作を提供します。 |
サービスレベル契約(SLA)は、アプリケーション認識型ルーティングで実行されるアクションを決定します。SLA クラスは、Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイスのデータプレーントンネルの最大ジッター、最大遅延、最大パケット損失、またはこれらの値の組み合わせを定義します。各データプレーントンネルは、ローカル トランスポート ロケータ(TLOC)とリモート TLOC のペアで構成されます。Cisco SD-WAN コントローラ の policy sla-class コマンド階層で SLA クラスを設定できます。Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN リリース 17.2.1r から、最大 8 つの SLA クラスを Cisco SD-WAN Validator で設定できます。ただし、アプリケーション認識ルートポリシーで定義できる一意の SLA クラスは 4 つだけです。Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN リリース 17.2.1r より前のリリースでは、最大 4 つの SLA クラスを設定できます。
Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN リリース 17.3.1a 以降、Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイスのポリシーごとに最大 6 つの SLA クラスを設定できます。
SLA クラスでは、次のパラメータを設定できます。
説明 |
コマンド |
値または範囲 |
---|---|---|
データプレーントンネルの最大許容パケットジッター |
ジッター(ミリ秒) |
1 ~ 1000 ミリ秒 |
データプレーントンネルの最大許容パケット遅延。 |
遅延(ミリ秒) |
1 ~ 1000 ミリ秒 |
データプレーントンネルの最大許容パケット損失 |
損失率(%) |
1 ~ 100% |
Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN リリース 17.15.1a 以降の、SLA クラスリストのしきい値は次のとおりです。
SLA クラス |
損失 % |
遅延(ms) |
Jitter (ms) |
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Voice-And-Video |
2 |
300 |
60 |
トランザクション データ |
1 |
200 |
200 |
バルク データ |
5 |
500 |
500 |
デフォルト |
5 |
500 |
500 |
SLA サポートの機能拡張
Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN リリース 17.6.1a および Cisco vManage リリース 20.6.1 以降、Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバ イスのポリシーごとに 6 つ以上の SLA クラスを設定できます。
Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイスが最大 16 の SLA クラスをサポートするには、16 GB 以上の RAM が必要です。
この機能拡張により、Cisco SD-WAN コントローラ および SD-WAN エッジデバイスでサポートされる SLA クラスの数が増加します。SLA クラスのサポートの増加により、SLA クラスをマルチプロトコル ラベル スイッチング(MPLS)ネットワーク上の IP 仮想プライベートネットワーク(IP-VPN)に合わせて、グローバルネットワークにトラフィックを転送できます。
SLA の機能拡張はマルチテナントに役立ち、テナントごとに異なる SLA クラスをプッシュできます。マルチテナント機能を使用するには、Cisco SD-WAN コントローラ が 8 つ以上の SLA クラスをサポートする必要があります。SLA クラスを異なるテナントに割り当てるには、ポリシーのグローバル制限を 64 にする必要があります。
(注) |
デフォルトの SLA は設定できません。デフォルトの SLA は、ユーザー定義の SLA が満たされない場合にトラフィックを転送するよう、すべてのデバイスに設定されます。 |
サポートするプラットフォームとモデル |
Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN リリース 17.6.1a より前のユーザー設定可能な SLA クラス(+1 デフォルト SLA クラス) |
Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN リリース 17.6.1a 以降のユーザー設定可能な SLA クラス(+1 デフォルト SLA クラス) |
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ASR 1001 HX -16GB
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6 |
15 |
ASR 1002 X -16GB
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6 |
15 |
ASR 1002 HX -16GB
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6 |
15 |
ASR 1001 X -16GB
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6 |
15 |
ISR 4451 X
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6 |
7 |
ISR 4431
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6 |
7 |
Catalyst 8300 エッジプラットフォーム
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該当なし |
7 |
Catalyst 8500 エッジプラットフォーム -16GB
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該当なし |
15 |
その他の Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス(C11xx、ISR1100、CSR1000v) |
6 |
6 |
SLA 優先色
Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN リリース 17.6.1a 以降、アプリケーション認識型ルーティングポリシーとデータポリシーの両方を設定し、データフローがアプリケーションルートとデータポリシーのシーケンスに一致する場合、想定される次の動作が発生します。
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アプリケーション認識型ルーティングで設定した優先色が SLA 要件を満たし、これらの優先色にデータポリシーと共通した色が含まれる場合、他の色よりも共通の優先色が転送用に選択されます。(Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN リリース 17.6.1a 以前は、データポリシーの優先色が転送され、アプリケーション認識型ルーティングポリシーの推奨は無視されていました)。
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アプリケーション認識型ルーティングの優先色が SLA を満たしていないが、データポリシーと共通する色があり、それらの色がアプリケーション認識型ルーティングの SLA を満たしている場合、これらの色が推奨され、転送用に選択されます。
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アプリケーション認識型ルーティングで SLA を満たすトンネルまたは色がない場合は、データポリシーが推奨され、転送用に選択されます。データポリシーに優先色がある場合は、それらの色が選択されます。それ以外の場合は、データポリシーのすべての色でロードバランスが発生します。
トンネルの SLA クラスへの分類
アプリケーション認識型ルーティングのためにトンネルを 1 つ以上の SLA クラスに分類するプロセスは、次の 3 つのパートで構成されます。
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トンネルの損失、遅延、ジッター情報の測定。
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トンネルの平均損失、遅延、ジッターの計算。
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トンネルの SLA 分類の決定。
損失、遅延、ジッターの測定
オーバーレイネットワークでデータプレーントンネルが確立されると、トンネルで BFD セッションが自動的に開始されます。オーバーレイネットワークでは、各トンネルはローカル TLOC とリモート TLOC 間の特定のリンクを識別する色で識別されます。BFD セッションは、Hello パケットを定期的に送信してリンクが動作しているかどうかを検出することで、トンネルの稼働状態をモニタリングします。アプリケーション認識型ルーティングでは、BFD Hello パケットを使用して、リンクの損失、遅延、およびジッターを測定します。
デフォルトでは、BFD Hello パケット間隔は 1 秒です。この間隔は、ユーザーが設定できます(bfd color interval コマンドを使用)。BFD Hello パケット間隔はトンネルごとに設定できることに注意してください。
平均損失、遅延、およびジッターの計算
BFD は、Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス上のすべてのトンネルを定期的にポーリングして、アプリケーション認識型ルーティングで使用するパケット遅延、損失、ジッター、およびその他の統計情報を収集します。アプリケーション認識型ルーティングは、ポーリング間隔ごとに、各トンネルの平均損失、遅延、およびジッターを計算し、各トンネルの SLA を計算または再計算します。各ポーリング間隔は「バケット」とも呼ばれます。
デフォルトでは、ポーリング間隔は 10 分間です。デフォルトの BFD Hello パケット間隔が 1 秒の場合、トンネルの損失、遅延、ジッターを計算するために、1 回のポーリング間隔で約 600 個の BFD Hello パケット情報が使用されることを意味します。ポーリング間隔は、ユーザーが設定できます(bfd app-route poll-interval コマンドを使用)。アプリケーション認識型ルーティングのポーリング間隔は、Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイスごとに設定できることに注意してください。つまり、デバイスを起点とするすべてのトンネルに適用されるということです。
BFD Hello パケット間隔を短くせずにポーリング間隔を短くすると、損失、遅延、ジッターの計算品質に影響する可能性があります。たとえば、BFD Hello パケット間隔が 1 秒の場合にポーリング間隔を 10 秒に設定すると、トンネルの損失、遅延、ジッターの計算に 10 個の Hello パケットのみが使用されます。
各ポーリング間隔からの損失、遅延、ジッター情報は、6 回のポーリング間隔にわたって保持されます。7 回目のポーリング間隔では、最も早いポーリング間隔の情報が破棄され、最新の情報が優先されます。このように、アプリケーション認識型ルーティングでは、トンネル損失、遅延、ジッター情報のスライディングウィンドウが維持されます。
ポーリング間隔の数(6)は、ユーザーでは設定できません。各ポーリング間隔は、show app-route statistics コマンドの出力のインデックス番号(0 ~ 5)によって識別されます。
SLA 分類の決定
トンネルの SLA 分類を決定するために、アプリケーション認識型ルーティングでは、最新のポーリング間隔に応じて収集された損失、遅延、およびジッター情報を使用します。使用されるポーリング間隔の数は、乗数によって決まります。デフォルトでは、乗数は 6 であるため、すべてのポーリング間隔(特に最後の 6 回のポーリング間隔)を通した情報を使用して分類が決定します。デフォルトのポーリング間隔が 10 分で、デフォルトの乗数が 6 の場合、各トンネルの SLA を分類するときに、直前の 1 時間に収集された損失、遅延、およびジッター情報が考慮されます。これらのデフォルト値は、トンネルの頻繁な再分類(フラッピング)を防ぐ方法として、一種の減衰となるように選択する必要があります。
乗数はユーザーが設定できます(bfd app-route multiplier コマンドを使用)。アプリケーション認識型ルーティング乗数は Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイスごとに設定できることに注意してください。つまり、デバイスを起点とするすべてのトンネルに適用されるということです。
トンネル特性の変化に迅速に対応する必要がある場合は、乗数を 1 まで減らすことができます。乗数が 1 の場合、そのトンネルが 1 つ以上の SLA 基準を満たすことができるかどうかを判断するために、最新のポーリング間隔での損失と遅延の値のみが使用されます。
トンネル損失と遅延の測定と計算に基づくと、各トンネルが 1 つ以上のユーザー設定の SLA クラスを満たすこともあります。たとえば、平均損失が 0 パケット、平均遅延が 10 ミリ秒のトンネルであれば、最大パケット損失が 5、最小遅延が 20 ミリ秒で定義されたクラスを満たすことになりますが、その上、最大パケット損失 0 、最小遅延が 15 ミリ秒で定義されたクラスも満たすことになります。
トンネルが再分類される速度に関わらず、損失、遅延、およびジッター情報は継続的に測定および計算されます。アプリケーション認識型ルーティングによる変更への対応速度は、ポーリング間隔と乗数を変更することで設定できます。
クラスごとのアプリケーション認識型ルーティング
機能名 |
リリース情報 |
説明 |
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クラスごとのアプリケーション認識型ルーティング |
Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN リリース 17.4.1a Cisco vManage リリース 20.4.1 |
この機能により、サービスレベル契約(SLA)の定義に基づいてトラフィックをネクストホップアドレスに転送する機能が強化されます。この SLA 定義と、トラフィックタイプを照合および分類するポリシーを使用することで、特定の Cisco Catalyst SD-WAN トンネルを介してトラフィックを転送できます。SLA の定義は、損失、遅延、ジッターの値で構成されます。これらの値は、2 つのトランスポートロケータ(TLOC)間に存在するBidirectional Forwarding Detection(BFD)チャネルを使用して測定されます。 |
クラスごとのアプリケーション認識型ルーティングの概要
SLA 定義は、2 つの TLOC 間に存在する BFD チャネルを使用して測定される損失、遅延、およびジッターの値で構成されます。これらの値から、ネットワークと BFD リンクのステータスがまとめて表されます。BFD 制御メッセージは、Differentiated Services Code Point(DSCP)が 48 という高プライオリティで送信されます。
高プライオリティパケットに基づく SLA メトリックには、エッジデバイスを通過する実際のデータによって受信されるプライオリティが反映されません。データは、アプリケーションクラスに応じて、ネットワーク内で異なる DSCP 値を持つことができます。したがって、ネットワークがこのような測定を使用してトラフィックタイプを適切なトンネルに転送するには、トラフィックプロファイルの損失、遅延、およびジッターをより正確に表現する必要があります。
アプリケーション認識型ルーティングでは、アプリケーションの転送に使用できるパスを制約するポリシーを使用します。こうした制約は通常、SLA クラスに規定された、満たすべき損失、遅延、およびジッターの要件をもとに表現されます。これに沿うには、これらのメトリックを、トラフィックの宛先に向かうすべてのパスで、アクティブプローブまたはパッシブモニタリングを使用して測定する必要があります。
アクティブプローブの方法には、実際のトラフィックとともに注入される合成トラフィックの生成などがあります。この場合、プローブと実際のトラフィックが同じように転送されることが想定されます。BFD プローブ、ICMP、定期的な HTTP 要求、および IP SLA 測定は、アクティブプローブの仕組みを表す例です。Cisco Catalyst SD-WAN ソリューションでは、アクティブな測定に BFD ベースのプローブを使用します。パッシブモニタリング方式は、Cisco Catalyst SD-WAN Application Intelligence Engine(SAIE)フローを使用して、実際のトラフィックをモニタリングします。たとえば、RTP/TCP トラフィックは、損失、遅延、およびジッターを確認するためにモニタリングされます。
(注) |
Cisco vManage リリース 20.7.1 以前のリリースでは、SAIE フローはディープ パケット インスペクション(DPI)フローと呼ばれていました。 |
アプリケーション プローブ クラス
アプリケーション プローブ クラス(app-probe-class)は、転送クラス、カラー、および DSCP で構成されます。これによって、転送されるアプリケーションのカラーごとのマーキングが定義されます。カラーまたは DSCP マッピングは、Cisco SD-WAN ネットワークサイトに対してローカルです。ただし、いくつかのカラーと、カラーの DSCP マッピングはサイトごとに変更されません。転送クラスによって、BFD エコー要求を出力トンネルポートでキューイングする場合の QoS キューが決まります。これは、BFD エコー要求パケットにのみ適用されます。BFD パケットのパケット損失優先順位は低に固定されています。BFD パケットが SLA クラスで送信される場合、同じ DSCP 値が使用されます。BFD パケットが SLA クラスとともに app-probe-class を使用して送信される場合、BFD パケットは各 SLA app-probe-class に対してラウンドロビン方式で個別に送信されます。
(注) |
アプリケーション ルート ポリシーがサイトに適用されると、そのサイトに関連するカラーのみが使用されます。Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイスは 6 つの SLA クラスをサポートしているため、app-probe-class も同様に最大 6 つまでサポートされます。 |
デフォルトの DSCP 値
DSCP 制御トラフィックで使用されるデフォルトの DSCP 値は 48 です。ただし、エッジデバイスで設定するオプションとともに、デフォルト値を変更するプロビジョニングがあります。すべてのネットワーク サービス プロバイダーが DSCP 48 を使用するとは限りません。
デフォルトの DSCP を持つ BFD パケットは、PMTU などの他の機能にも使用できます。デフォルト DSCP を変更すると、他の機能が変更後のデフォルト DSCP 値に影響を受けます。したがって、サービスプロバイダーが提供する、優先順位の最も高い DSCP マーキングを設定することを推奨します(通常は 48 ですが、サービスプロバイダーの SLA 契約によって異なる場合があります)。色のレベルは、グローバルレベルのデフォルト DSCP マーキングを上書きします。