アクセス ポイント機能の概要
Cisco Aironet アクセス ポイント(これ以降は アクセス ポイント 、または略して AP と呼ぶ)は、安全で安価な使いやすい無線 LAN ソリューションを提供します。これはモビリティと柔軟性のほかに、ネットワーキングの専門家が必要とするエンタープライズクラスの機能を併せ持っています。Cisco IOS ソフトウェアをベースにした管理システムでは、Cisco Aironet アクセス ポイントは、Wi-Fi 認定済みであり、特定のモデルによって、802.11a 準拠、 802.11b 準拠、802.11g 準拠、802.11n 準拠、および 802.11ac 準拠の無線 LAN トランシーバになります。
(注) 1530、1700、または 2700 シリーズ AP は、初回の起動時に、統合モードのソフトウェア イメージを使用して起動されます。自律ネットワークに AP を展開するには、AP コンソールまたは Telnet から次のコマンドを使用して、自律モードのソフトウェア イメージで AP を再起動させます。
capwap ap autonomous
AP のソフトウェア イメージの詳細については、ソフトウェア イメージの操作を参照してください。
ワイヤレス デバイスは、コマンドライン インターフェイス(CLI)、ブラウザベースの管理システム、または 簡易ネットワーク管理プロトコル(SNMP)を使用して設定およびモニタできます。
アクセス ポイントの無線
アクセス ポイントは、無線ネットワークと有線ネットワーク間の接続ポイントとして、またはスタンドアロンの無線ネットワークのセントラル ポイントとして機能します。大規模な導入環境では、アクセス ポイントの無線範囲内であれば、無線ユーザは構内を移動しながらシームレスで遮断されないネットワーク アクセスを維持できます。
各アクセス ポイント プラットフォームには、1 台、2 台、または 3 台の無線が含まれます。各アクセス ポイント モデルでサポートされている無線の詳細については、そのモデルに対応するアクセス ポイント データ シートを参照してください。
このリリースの新機能およびコマンド
このリリースで追加された新機能および既存の機能に対して行われた更新についての詳細は、次の URL にあるこのリリースの『Release Notes for Autonomous Cisco Aironet Access Points and Bridges』を参照してください。
(FCS に追加される URL)
(注) Cisco IOS Release 12.3(2)JA 以降では、プロキシ モバイル IP 機能はサポートされません。
管理オプション
ワイヤレス デバイス管理システムは、次のインターフェイスから使用できます。
- Cisco IOS コマンドライン インターフェイス(CLI)。このインターフェイスはコンソール ポートまたは Telnet セッションを通じて使用します。ワイヤレス デバイスを無線コンフィギュレーション モードにするには、 interface dot11radio グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。このマニュアルのほとんどの例は、CLI から引用されています。“コマンドライン インターフェイスの使用,” に、CLI についての詳細が記載されています。
- Web ブラウザ インターフェイスは、Web ブラウザを介して使用します。“Web ブラウザ インターフェイスの使用方法,”に、Web ブラウザ インターフェイスについての詳細が記載されています。
- 簡易ネットワーク管理プロトコル(SNMP)。SNMP 管理のためのワイヤレス デバイスの設定方法については、“SNMP の設定,”を参照してください。
クライアント デバイスのローミング
無線 LAN に複数のワイヤレス デバイスがある場合、無線クライアント デバイスは、あるワイヤレス デバイスから別の無線デバイスへとシームレスにローミングできます。ローミング機能は、近接度ではなく、信号の品質に基づきます。クライアントからの信号品質が低下すると、ローミングは別のアクセス ポイントに切り替わります。
クライアント デバイスが近くのアクセス ポイントにローミングせずに、遠くのアクセス ポイントにアソシエートしたままになることを懸念する無線 LAN ユーザがいます。ただし、遠隔のアクセス ポイントへのクライアントの信号が強度に維持され、信号品質が高い場合、クライアントはより近いアクセス ポイントにローミングしません。近接するアクセス ポイントを常にチェックするのは非効率であり、無線のトラフィックの増加により無線 LAN のスループットを低下させます。
無線分散システム(WDS)を提供するデバイスで Cisco Centralized Key Management(CCKM)または 802.11r を使用すると、クライアント デバイスはアクセス ポイント間をすばやくローミングできるため、音声やその他の時間が重要なアプリケーションで、知覚できるほどの遅延は生じません。
ネットワークの構成例
この項では、一般的な無線ネットワーク構成でのアクセス ポイントの役割について説明します。デフォルトでは、アクセス ポイントは、有線 LAN に接続したルート ユニットとして、または完全なワイヤレス ネットワーク内のセントラル ユニットとして構成されます。アクセス ポイントは、リピータ アクセス ポイント、ブリッジ、およびワークグループとしても設定できます。これらの役割には特定の設定が必要です。
ルート アクセス ポイント
有線 LAN に直接接続されるアクセス ポイントは、無線ユーザへの接続ポイントとして機能します。LAN に複数のアクセス ポイントが接続されている場合、ユーザはネットワークへの接続を維持したまま、構内のエリアをローミングできます。1 つのアクセス ポイントの範囲外に移動したユーザは、自動的に別のアクセス ポイントを経由してネットワークに接続(アソシエート)されます。ローミング プロセスはシームレスで、ユーザには意識されません。図 1-1 は、有線 LAN 上でルート ユニットとして機能するアクセス ポイントを示しています。
図 1-1 有線 LAN 上でルート ユニットとして機能するアクセス ポイント
リピータ アクセス ポイント
アクセス ポイントは、インフラストラクチャの範囲を拡張したり、無線通信を妨害する障害を克服したりするスタンドアロン リピータとして設定できます。リピータは、別のリピータや、有線 LAN に接続されているアクセス ポイントにパケットを送信することによって、無線ユーザと有線 LAN との間でトラフィックを転送します。データは、クライアントに最高のパフォーマンスを提供するルートを経由して送信されます。図 1-2 は、リピータとして機能するアクセス ポイントを示しています。アクセス ポイントをリピータとして設定する方法については、『“リピータ アクセス ポイントの設定”』を参照してください。
(注) シスコ以外のクライアント デバイスを使用すると、リピータ アクセス ポイントとの通信に問題が生じる可能性があります。
図 1-2 リピータとして機能するアクセス ポイント
ブリッジ
アクセス ポイントは、ルート ブリッジまたは非ルート ブリッジとして設定できます。この役割では、アクセス ポイントは非ルート ブリッジとの無線リンクを確立します。トラフィックはリンク経由で有線 LAN に転送されます。ルート ブリッジおよび非ルート ブリッジの役割を持つアクセス ポイントは、クライアントからのアソシエーションを受け入れるように設定できます。図 1-3 は、クライアントとのルート ブリッジとして設定されたアクセス ポイントを示しています。図 1-4 は、ルート ブリッジおよび非ルート ブリッジとして設定され、いずれもクライアント アソシエーションを受け付ける 2 つのアクセス ポイントを示しています。アクセス ポイントをブリッジとして設定する方法については、“無線ネットワークの役割の設定” sectionを参照してください。
無線ブリッジがポイントツーマルチポイント構成に使用される場合、ルート ブリッジにアソシエートする非ルート ブリッジの数に応じてスループットは減少します。リンクのデータ レートが 54 Mbps の場合、ポイントツーポイント リンクでの最大スループットは約 25 Mbps です。3 つのブリッジを追加してポイントツーマルチポイント ネットワークを形成すると、スループットは約 12.5Mbps に減少します。
図 1-3 クライアントとのルート ブリッジとして機能するアクセス ポイント
図 1-4 クライアントとのルート ブリッジおよび非ルート ブリッジとして機能するアクセス ポイント
ワークグループ ブリッジ
アクセス ポイントをワークグループ ブリッジとして設定できます。ワークグループ ブリッジ モードのアクセス ポイントは、別のアクセス ポイントにクライアントとしてアソシエートして、イーサネット ポートに接続されたデバイスをネットワークに接続します。たとえば、ネットワーク プリンタのグループを無線で接続する必要がある場合は、プリンタをハブまたはスイッチに接続し、ハブまたはスイッチをアクセス ポイントのイーサネット ポートに接続し、そのアクセス ポイントをワークグループ ブリッジとして設定します。ワークグループ ブリッジはネットワーク上のアクセス ポイントにアソシエートします。
アクセス ポイントに複数の無線がある場合、いずれかの無線がワークグループ ブリッジ モードとして機能できます。
図 1-5 は、ワークグループ ブリッジとして設定されたアクセス ポイントを示しています。アクセス ポイントをワークグループ ブリッジとして設定することについては、“ワークグループ ブリッジ モードの概要” sectionおよび “ワークグループ ブリッジ モードの設定” sectionを参照してください。
図 1-5 ワークグループ ブリッジとして機能するアクセス ポイント
完全な無線ネットワークでのセントラル ユニット
完全なワイヤレス ネットワークでは、アクセス ポイントはスタンドアロンのルート ユニットとして機能します。アクセス ポイントは有線 LAN には接続されません。全ステーションをまとめてリンクするハブとして機能します。アクセス ポイントは通信の中心として機能し、無線ユーザの通信範囲を拡張します。図 1-6 は、完全なワイヤレス ネットワークでのアクセス ポイントを示しています。
図 1-6 完全なワイヤレス ネットワークでセントラル ユニットとして機能するアクセス ポイント