この文書は、ATM インターフェイスでの Cyclic Redundancy Check(CRC; 巡回冗長チェック)エラーの背後にある原因を特定する際に利用できます。
このドキュメントに関しては個別の前提条件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
Cisco デバイスでの show interfaces コマンドの出力には、多数のカウンタが含まれます。これらのカウンタの 1 つに CRC があります。CRC カウンタは、発信側端末または遠端デバイスによって生成されたチェックサムが、受信されたデータから計算されたチェックサムと一致しない回数(該当するパケットの数に相当)をカウントします。これにより、伝送中に Protocol Data Unit(PDU; プロトコル データ ユニット)が変化したことが検出されます。通信しているデータが送信先で正しく解釈されるようにするためには、この PDU の正確な値を保持することが重要です。
CRC エラーは通常、データ リンクまたはインターフェイス自体のノイズ、ゲイン ヒット、または伝送上の問題を示します。イーサネット セグメントでは、CRC エラーの原因はコリジョン、または端末による不良データの送信です。ATM インターフェイスでは、ATM ネットワーク プロバイダーがスイッチ「網内の全パケットのうち一部のセルを廃棄したときにも、CRC エラーが発生します。 これは、伝送しているセルの数とビット/秒のポリシングのために行われる場合があります。ポリシングの詳細については、ここをクリックしてください。ATM インターフェイスでは、Segmentation And Reassembly(SAR)機能によってセルを再構成して完全なパケットを再作成する際に、これらの損失セルが検出されます。したがって、ATM インターフェイスでの CRC エラーは、トラフィック シェーピングとトラフィック ポリシングのパラメータのミスマッチを示している可能性があります。
注: input errors カウンタは、CRC、「no buffers」、runts、giants、frames、overruns、ignored、aborts、およびその他の入力関連エラーの総数を追跡します。したがって input errors カウンタは、CRC カウンタと同じかそれ以上の数になります。エラーの発生および入出力の差は、インターフェイスのトラフィックの 1.0 % を超えないようにすることが必要です。
次に、show interfaces コマンドの出力例を示します。
Router#show interfaces atm 4/0 ATM4/0 is up, line protocol is up Hardware is cxBus ATM Internet address is 131.108.97.165, subnet mask is 255.255.255.0 MTU 4470 bytes, BW 100000 Kbit, DLY 100 usec, rely 255/255, load 1/255 ATM E164 Auto Conversion Interface Encapsulation ATM, loopback not set, keepalive set (10 sec) Encapsulation(s): AAL5, PVC mode 256 TX buffers, 256 RX buffers, 1024 Maximum VCs, 1 Current VCs Signalling vc = 1, vpi = 0, vci = 5 ATM NSAP address: BC.CDEF.01.234567.890A.BCDE.F012.3456.7890.1234.13 Last input 0:00:05, output 0:00:05, output hang never Last clearing of "show interface" counters never Output queue 0/40, 0 drops; input queue 0/75, 0 drops Five minute input rate 0 bits/sec, 0 packets/sec Five minute output rate 0 bits/sec, 0 packets/sec 144 packets input, 31480 bytes, 0 no buffer Received 0 broadcasts, 0 runts, 0 giants 13 input errors, 12 CRC, 0 frame, 0 overrun, 1 ignored, 0 abort 154 packets output, 4228 bytes, 0 underruns 0 output errors, 0 collisions, 1 interface resets, 0 restarts
ATM は 5 つの ATM Adaptation Layer(AAL)をサポートします。AAL5 は Common Part Convergence Sublayer Protocol Data Unit(CPCS-PDU; CPCS プロトコル データ ユニット)に 8 バイトのトレーラーを追加します。CPCS-PDU は、元のレイヤ 3 パケット(IP パケットなど)から構成されてから、53 バイトのセルに分割されます。Permanent Virtual Circuit(PVC; 相手先固定接続)に encapsulation aal5snap コマンドを設定した場合は、この AAL5 トレーラーを使用するように通知したことになります。また、Logical Link Control(LLC; 論理リンク制御副層)または Subnetwork Access Protocol(SNAP; サブネットワーク アクセス プロトコル)のヘッダーも指定したことになり、このヘッダーはイーサネットで同様に使用されます。
注:Ciscoルータでは、「フレーム」、「AAL5フレーム」、「CPCS-PDU」という用語はすべて、ATMインターフェイスについて話す際に同じ概念を指します。
Request for Comments(RFC)1483 「Multiprotocol Encapsulation over ATM Adaptation Layer 5」では、aal5snapカプセル化とAAL5トレーラの使用方法を定義しています。CRC はトレーラーの最後の 4 バイトを占め、実際の CRC フィールド自体を除く CPCS-PDU の大部分を保護します。
Cisco ルータでは、複数のモデルの ATM インターフェイスを使用できます。モデルの中には Virtual Circuit(VC; 仮想回線)ごとのカウンタをサポートするものと、インターフェイス全体でのみエラーをカウントするものがあります。
VC ごとのカウンタは、CRC エラーがどの VC で発生したかを特定する作業を簡略化します。たとえば、PA-A3 を使用している場合、最初に show atm pvc vpi/vci コマンドを使用して VC を一覧表示することにより、VC ごとの CRC
注:これを行う場合は、指定したローカルで有効なVCD(Virtual Circuit Descriptor)と設定済みのVPI/VCIペアを表示するカラム名をメモしてください。次に、show atm pvc コマンドを使用して VC ごとの情報を表示します。
次に例を示します。
7206-1#show atm vc VCD / Peak Avg/Min Burst Interface Name VPI VCI Type Encaps SC Kbps Kbps Cells Sts 2/0 1 2 3 PVC F4-OAM UBR 2000 UP 2/0 2 2 4 PVC F4-OAM UBR 2000 UP 2/0 10 4 55 PVC SNAP UBR 155000 UP 2/0.125 40 40 45 PVC NLPID UBR 155000 UP 2/0.125 50 45 45 PVC NLPID UBR 155000 UP 4/0.2 1 16 32 PVC SNAP UBR 149760 UP 6/0 1 10 100 PVC SNAP UBR 44209 UP 7206-1#show atm pvc ? ppp PPP over ATM information interface <0-255> VPI/VCI value(slash required) <1-65535> VCI WORD Connection Name | Output modifiers 7206-1#show atm pvc 10/100 ATM6/0: VCD: 1, VPI: 10, VCI: 100 UBR, PeakRate: 44209 AAL5-LLC/SNAP, etype:0x0, Flags: 0xC20, VCmode: 0x0 OAM frequency: 0 second(s), OAM retry frequency: 1 second(s), OAM retry frequency: 1 second(s) OAM up retry count: 3, OAM down retry count: 5 OAM Loopback status: OAM Disabled OAM VC state: Not Managed ILMI VC state: Not Managed InARP frequency: 15 minutes(s) Transmit priority 4 InPkts: 0, OutPkts: 116261, InBytes: 0, OutBytes: 4999250 InPRoc: 0, OutPRoc: 116261, Broadcasts: 0 InFast: 0, OutFast: 0, InAS: 0, OutAS: 0 InPktDrops: 0, OutPktDrops: 0 CrcErrors: 0, SarTimeOuts: 0, OverSizedSDUs: 0 OAM cells received: 0 F5 InEndloop: 0, F5 InSegloop: 0, F5 InAIS: 0, F5 InRDI: 0 F4 InEndloop: 0, F4 InSegloop: 0, F4 InAIS: 0, F4 InRDI: 0 OAM cells sent: 0 F5 OutEndloop: 0, F5 OutSegloop: 0, F5 OutRDI: 0 F4 OutEndloop: 0, F4 OutSegloop: 0, F4 OutRDI: 0 OAM cell drops: 0 Status: UP
RFC 2515では 、CrcErrorsを次のように定義しています。
al5VccCrcErrors OBJECT-TYPE SYNTAX Counter32 MAX-ACCESS read-only STATUS current DESCRIPTION "The number of AAL5 CPCS PDUs received with CRC-32 errors on this AAL5 VCC at the interface associated with an AAL5 entity." ::= { aal5VccEntry 3 }
次に、ATM CRC エラーの考えられる原因をいくつか示します。
ATM インターフェイスに接続された 1 つ以上の VC 上の ATM クラウド内のトラフィック ポリシングが原因でドロップされたセル。
データリンク機器でのノイズ、ゲイン ヒット、またはその他の伝送上の問題。
ATMインターフェイスの故障または障害
show interfaces コマンド出力には、CRCこれらのエラーは、SAR によってセルが再構成されて CRC がチェックされたときに、計算された CRC の値が、構成されたパケットの CRC フィールドの値と一致しないことを示します。
発生している問題の原因を特定するには、次の手順を実行します。
CRCカウンタが増加し続けているのか、またはすでに修正された問題の履歴値なのかを判別します。
数時間または数日にわたり、show interfaces atm コマンドを複数回実行します。
比較的容易なトラブルシューティングの場合、適切であればカウンタをクリアーします。
回線は新しいですか。今までこの回線は CRC エラーなしに動作していましたか?
CRC エラーがいつ発生するかを特定します。
CRC エラーがある特定の時間帯、またはトラフィックが多い期間に発生しているかどうかを確認します。そうであれば、ATM サービス プロバイダーとの間で取り決めたトラフィック シェーピング パラメータを超過している可能性があります。
スイッチ網を調べ、輻輳があるかどうかを判別します。この点については、サービス プロバイダーに問い合せる必要がある場合があります。
プロバイダーに問い合せてトラフィック シェーピング パラメータを確認します。ATMヘッダー内の Cell Loss Priority(CLP; セル廃棄優先)ビットが 1 に設定されたセルが見られるかどうかをプロバイダーに問い合せます。 また、サービス プロバイダーのスイッチ インターフェイスでセルの廃棄が記録されているかどうかも確認します。
さまざまな IP パケット サイズの ping を使用して回線をテストします。詳細については、 ここをクリックしてください。
ハードウェアが故障していないかどうかを確認します。
ハードウェアまたはポートを入れ替えてみます。
自身のインターフェイスに ping して、ローカル ループバック テストを実行します。ループバックの詳細については、ここを参照してください。
メイン ATM インターフェイスで loopback diagnostic および atm clock internal コマンドを使用して、ソフト ループバックを作成します。loopback diagnostic は、ローカル インターフェイスのみで送信を受信にループさせることにより、ネットワークまたはデータ リンクを効果的に分離します。
注:ATMインターフェイスは通常、回線からクロッキングを取得します。loopback diagnostic に設定した場合は ATM インターフェイスが回線からクロッキングを取得できないため、atm clock internal コマンドによってローカル オシレータを使用する必要があります。適切であれば、このテストの終了後にクロック ソースを回線に戻します。
ハード ループバックを作成し、送信側(TX)から受信側(RX)に伝送されるように光ファイバを接続します。
Troubleshooting ATM CRC Errorsをクリックして、loopback lineコマンドとloopback diagnosticコマンドのビデオを確認してください。
回線上でループバック テストを実行し、CRC エラーがノイズを示しているのか、またはその他の伝送上の問題を示しているのかを判別します。
2 つの ATM インターフェイス上にテスト PVC を作成し、IPアドレスを割り当てます。可能であれば、ポイントツーポイント サブインターフェイスを作成します。次にさまざまなバイト サイズを使用して拡張 ping テストを実行します。特定のパケット サイズで CRC が増加するかどうかを確認します。
リモート ATM ルータ インターフェイスで loopback line コマンドを使用します。loopback line によってリモート エンドの受信側が送信側にループバックされるため、ローカル インターフェイスが SARリモート インターフェイスで CRC が記録された場合、リモート インターフェイスがループバックにある状態でローカル インターフェイスまで CRC が記録されたかどうかを確認します。そうであれば、Cisco ハードウェアは正常に動作しており、問題の原因は伝送パスにあることがわかります。
loopback lineをクリックすると、このコマンドの動作に関するビデオが表示されます。
debug atm errors によって生成されたデバッグ情報をログに記録します。この debug コマンドはハードウェアの動作に影響を与えないため、通常は実稼働インターフェイスで有効にできます。
上記のステップを実行することにより、発生している CRC エラーの原因を特定できます。
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
15-Nov-2007 |
初版 |