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この章では、Cisco MDS 9000 スイッチが提供するトランキング機能について説明します。この章の内容は、次のとおりです。
トランキングは VSAN トランキングとも呼ばれ、Cisco MDS 9000 ファミリのスイッチに特有の機能です。トランキングでは、相互接続ポートが同一物理リンクによって複数の VSAN のフレームを送受信できます。トランキングは E ポートおよび F ポートでサポートされます(図 7-1 および図 7-2 を参照)。
• 「重要な概念」
E ポートをトランキングすると、相互接続ポートが Enhanced ISL(EISL; 拡張 ISL)フレーム形式を使用して、同一物理リンクによって複数の VSAN のフレームを送受信できます。
(注) HP c-Class BladeSystem 用 Cisco ファブリック スイッチおよび IBM BladeCenter 用 Cisco ファブリック スイッチの両方の内部ポートでは、トランキングがサポートされません。
F ポートをトランキングすると、相互接続ポートが同一物理リンクによって、複数の VSAN のタグ付きフレームを送受信できます。図 7-2 に、MDS コア スイッチ、NPV スイッチ、サードパーティ製コア スイッチ、および HBA が含まれる SAN で想定されるトランキングのシナリオを示します。
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F ポートと N ポートのトランク1 |
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• TE ポート:E ポートでトランク モードをイネーブルにして、このポートをトランキング E ポートとして動作させる場合、そのポートは TE ポートと呼ばれます。
• TF ポート:F ポートでトランク モードをイネーブルにして(図 7-2 のリンク 2 を参照)、このポートをトランキング F ポートとして動作させる場合、そのポートは TF ポートと呼ばれます。
• TN ポート:N ポートでトランク モードをイネーブル(現在は未サポート)にして(図 7-2 のリンク 1b を参照)、このポートをトランキング N ポートとして動作させる場合、そのポートは TN ポートと呼ばれます。
• TNP ポート:NP ポートでトランク モードをイネーブルにして(図 7-2 のリンク 2 を参照)、このポートをトランキング NP ポートとして動作させる場合、そのポートは TNP ポートと呼ばれます。
• TF ポートチャネル:F ポートチャネルでトランク モードをイネーブルにして(図 7-2 のリンク 4 を参照)、このポートチャネルをトランキング F ポートチャネルとして動作させる場合、そのポートチャネルは TF ポートチャネルと呼ばれます。Cisco Port Trunking Protocol(PTP)を使用して、タグ付きフレームが伝送されます。
• TF-TN ポート リンク:Exchange Virtual Fabrics Protocol(EVFP)を使用して、F ポートを HBA に接続する単一のリンクを確立し、タグ付きフレームを伝送できます(図 7-2 のリンク 1a および 1b を参照)。サーバは、Inter-VSAN Routing(IVR)を使用せずに、TF ポートを使用して複数の VSAN に到達できます。
• TF-TNP ポート リンク:PTP プロトコルを使用して、TF ポートを TNP ポートに接続する単一のリンクを確立し、タグ付きフレームを伝送できます(図 7-2 のリンク 2 を参照)。PTP もトランキング ポートチャネルをサポートしているため、このプロトコルが使用されます。
(注) サードパーティ製 NPV コア スイッチと Cisco NPV スイッチ間の TF-TNP ポート リンクは、EVFP プロトコルを使用して確立されます。
• ファイバ チャネル VSAN は仮想ファブリックと呼ばれ、VSAN ID の代わりに VF_ID を使用します。デフォルトでは、すべてのポートで VF_ID は 1 です。N ポートがトランキングをサポートしている場合は各 VSAN に対して pWWN が定義されます。これは論理 pWWN と呼ばれます。MDS コア スイッチの場合、N ポートが追加の FC_ID を要求する pWWN は、仮想 pWWN と呼ばれます。
• F ポートは Fx モードでトランキングをサポートします。
• TE、TF、および TNP の各リンク用に設定したトランク許可 VSAN はトランキング プロトコルによって使用され、フレームの送受信ができる許可アクティブ VSAN が判断されます。
• トランキングがイネーブルの E ポートをサードパーティ製スイッチに接続すると、トランキング プロトコルによって E ポートとしてのシームレスな動作が保証されます。
• 次のハードウェアでは、F ポートおよび F ポートチャネルのトランキングがサポートされていません。
– 91x4 スイッチ(NPIV がイネーブルで、NPIV コア スイッチとして使用する場合)
– 第 1 世代の 2 Gbps ファイバ チャネル スイッチング モジュール
• コア スイッチでは、物理 pWWN からの物理 FLOGI に対してだけ FC-SP 認証がサポートされます。
• NPV スイッチはサーバ F ポートで FC-SP 認証をサポートしません。
• MDS は VSAN 全体で論理 pWWN が一意であることを強制しません。
• トランキングされた F ポート ログインで DPVM はサポートされません。
• DPVM 機能はポート VSAN の制御だけに限定されています。これは、EVFP プロトコルでは論理 pWWN で FLOGI を実行した VSAN を変更できないためです。
• ポート セキュリティ設定は、最初の物理 FLOGI および VSAN ごとの FLOGI の両方に適用されます。
• FlexAttach がイネーブルにされている F ポートでは、トランキングをサポートしません。
• MDS 91x4 コア スイッチでハード ゾーン分割を実行できるのは、NPIV またはトランキングのいずれかを実行している F ポートだけです。ただし、NPV モードではゾーン分割がコア F ポートで実行されるため、この制限が適用されません。
VSAN を正しく設定していないと、接続に問題が発生する場合があります。たとえば、2 つの VSAN のトラフィックをマージする場合に、両方の VSAN の不一致が発生します。トランキング プロトコルではリンクの両側で VSAN インターフェイスが確認され、VSAN のマージが回避されます(図 7-3 を参照)。
トランキング プロトコルが潜在的な VSAN のマージを検出し、関連ポートを分離します(図 7-3 を参照)。
2 つの Cisco MDS 9000 ファミリ スイッチの間にサードパーティ製スイッチが配置されている場合、トランキング プロトコルは VSAN のマージを検出できません(図 7-4 を参照)。
VSAN 2 および VSAN 3 は、ネーム サーバおよびゾーン アプリケーションにおいて重複エントリで事実上マージされます。Cisco MDS 9000 ファブリック マネージャでは、このようなトポロジを検出できます。
トランキングおよびチャネリング機能には、次のようなアップグレードとダウングレードに関する制約事項があります。
• リンク上に F ポートのトランキングまたはチャネリングが設定されている場合は、Cisco MDS SAN-OS リリース 3.x および NX-OS リリース 4.1(1b)、またはそれ以前のリリースにスイッチをダウングレードできません。
• SAN-OS リリース 3.x から NX-OS リリース 5.0(1) にアップグレードするときに VSAN 4079 を作成していない場合は、NX-OS ソフトウェアによって VSAN 4079 が自動的に作成され、EVFP を使用するために予約されます。
VSAN 4079 を作成してある場合、NX-OS リリース 5.0(1) へのアップグレードは VSAN 4079 に影響しません。
NX-OS リリース 5.0(1) によって VSAN 4079 が作成され、EVFP を使用するために予約が行われたあとにダウングレードを行うと、この VSAN の予約は無効になります。
TE ポートの場合、そのインターフェイスで VSAN が起動してピアがネゴシエーション フェーズにあるとき、VSAN は初期状態にあります。ハンドシェイクが完了すると、成功した場合はアップの状態に、失敗した場合は分離状態に移行します。Device Manager では、初期化状態ではポート ステータスが黄色で表示され、VSAN がアップすると緑色で表示されます。
TF ポートの場合、ハンドシェイク後に許可 VSAN のいずれかがアップ状態に移行します。ピアとのハンドシェイクが完了し、それが成功した場合でも、他の VSAN はすべて初期状態となります。対応する VSAN にある、トランキングされた F または NP ポートを使用してサーバまたはターゲットがログインしたとき、各 VSAN は、初期化状態からアップ状態に移行します。
(注) TF ポートまたは TNP ポートの場合、ポートがアップしていてエラーがない場合でも、Device Manager ではポート ステータスが黄色で表示されます。このステータスは、すべての VSAN のログインが成功すると緑色に変化します。
ここでは、図 7-2 で示した必須のトランキング プロトコルおよびチャネリング プロトコルをイネーブルまたはディセーブルにする方法について説明します。説明する内容は、次のとおりです。
• 「F ポートのトランキングおよびチャネリング プロトコルのイネーブル化」
トランキング プロトコルは、ポートでトランキング処理を行う場合に重要です。このプロトコルでは、次のような処理を実行します。
表 7-1 に、トランキングおよびチャネリングに使用するプロトコルを示します。
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TF-TN ポート リンク2 |
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デフォルトでは、トランキング プロトコルは E ポートでイネーブル、F ポートではディセーブルです。トランキング プロトコルをスイッチでディセーブルにすると、そのスイッチのポートには新しいトランク設定を適用できません。既存のトランク設定は影響されません。TE ポートは引き続きトランク モードで機能しますが、以前(トランキング プロトコルがイネーブルだったときに)ネゴシエーションした VSAN だけでトラフィックをサポートします。このスイッチに直接接続されているその他のスイッチは、接続インターフェイスで同じように影響されます。トランキング以外の ISL 間で、さまざまなポート VSAN からのトラフィックをマージしなければならないことがあります。そのような場合は、トランキング プロトコルをディセーブルにします。
(注) トランキング リンクの両側が同じポート VSAN に属することを推奨します。ポート VSAN が異なる特定スイッチまたはファブリック スイッチでは、片側がエラーを返し、反対側が接続されません。
ヒント 矛盾した設定を避けるには、すべてのポートをシャットダウンしてからトランキング プロトコルのイネーブル化またはディセーブル化を行います。
(注) トランキング プロトコルをイネーブルにしてトランキングをサポートし、コア スイッチ上で NPIV をイネーブルにして TF-TNP リンクをアクティブ化する必要があります。NPIV をイネーブルにするには、feature npiv コマンドを使用します。
F ポートのトランキング プロトコルおよびチャネリング プロトコルをイネーブルまたはディセーブルにする手順は、次のとおりです。
F ポートのトランキングおよびチャネリングがイネーブルなスイッチのリストが、[Fabric] に表示されます。
ステップ 2 [Status] カラムで [enable] または [disable] を選択します。
• 「トランク許可 VSAN リストおよび VF_ID の概要」
デフォルトでは、非 NPV スイッチのすべてのファイバ チャネル インターフェイス(モード:E、F、FL、Fx、ST、および SD)でトランク モードがイネーブルです。NPV スイッチのデフォルトでは、トランク モードはディセーブルです。トランク モードは、on(イネーブル)、off(ディセーブル)、auto(自動)のうちいずれかに設定できます。2 つのスイッチ間での ISL の両端のトランク モード設定により、リンクのトランキング状態および両端のポート モードが決まります( 表 7-2 を参照)。
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ヒント Cisco MDS 9000 ファミリ スイッチでの推奨設定は、トランクの片側が auto、反対側が on です。
(注) サードパーティ製スイッチに接続した場合、E ポートのトランク モード設定は有効になりません。ISL は常にトランキングがディセーブルの状態です。F ポートの場合、EVFP ビットを使用する、サードパーティ製コア スイッチ ACC の物理 FLOGI が設定されていると、EVFP プロトコルによってリンクのトランキングがイネーブルになります。
Fabric Manager を使用してトランク モードを設定する手順は、次のとおりです。
ステップ 2 [Trunk Config] タブをクリックして、選択したインターフェイスのトランキング モードを変更します。
図 7-5 に示す情報が表示されます。
ステップ 3 [Admin] および [Allowed VSANs] の値を変更します。
ステップ 4 [Trunk Failures] タブをクリックし、リンクがアップしなかったかどうかをチェックします。
[FailureCause] カラムには理由が表示されます(図 7-6 を参照)。
ステップ 5 [Apply Changes] アイコンをクリックします。
それぞれのファイバ チャネル インターフェイスには、トランク許可 VSAN リストが関連しています。TE ポート モードの場合、フレームはこのリストで指定されている 1 つ以上の VSAN で送受信されます。デフォルトの場合、VSAN 範囲(1 ~ 4093)がトランク許可リストに組み込まれています。
スイッチで設定されてアクティブになっている VSAN の共通セットは、インターフェイスのトランク許可 VSAN リストに組み込まれ、これは 許可アクティブ VSAN と呼ばれます。トランキング プロトコルでは許可アクティブ VSAN のリストが ISL の 2 つの端で使用され、トラフィックが許可される動作 VSAN のリストが判断されます。
トランク許可 VSAN のデフォルト設定で、スイッチ 1(図 7-7 を参照)に VSAN 1 ~ 5、スイッチ 2 に VSAN 1 ~ 3、スイッチ 3 に VSAN 1、2、4、5 が含まれています。3 つのすべてのスイッチで設定されているすべての VSAN は許可アクティブです。ただし、ISL の端で許可アクティブ VSAN の共通セットだけが動作状態になります(図 7-7 を参照)。
すべての F ポート、N ポート、および NP ポートについて、VF_ID が設定されていない場合のデフォルト VF_ID は 1 です。ポートのトランク許可 VF_ID リストは、トランク許可 VSAN のリストと同一です。VF_ID 4094 は制御 VF_ID と呼ばれ、リンクでトランキングがイネーブルな場合にトランク許可 VF-ID のリストを定義するために使用されます。
F ポートのトランキングおよびチャネリングがイネーブルな場合、任意のインターフェイスの NPV モードで switchport trunk mode on が設定されている場合、または NP ポートチャネルが設定されている場合、設定に使用できる VSAN および VF-ID の範囲は 表 7-3 のとおりです。
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(注) F ポートと N ポートの VF_ID が一致しない場合、タグ付きフレームは交換できません。
許可アクティブ リストから VSAN の選択セットを設定し、トランキング ISL で指定されている VSAN へのアクセスを制御できます。
図 7-7 を例として使用し、インターフェイスごとに許可 VSAN のリストを設定できます(図 7-8 を参照)。たとえば、スイッチ 1 に接続されている ISL の許可 VSAN リストから VSAN 2 および 4 を削除すると、ISL ごとの VSAN の動作許可リストは次のようになります。
• スイッチ 1 およびスイッチ 2 の間の ISL には、VSAN 1 および VSAN 3 が含まれます。
• スイッチ 2 およびスイッチ 3 の間の ISL には、VSAN 1 および VSAN 2 が含まれます。
• スイッチ 3 およびスイッチ 1 の間の ISL には、VSAN 1、2、5 が含まれます。
その結果、VSAN 2 は、スイッチ 1 からスイッチ 3 を通ってスイッチ 2 にルーティングされます。
Fabric Manager を使用して VSAN の許可アクティブ リストをインターフェイスに設定する手順は、次のとおりです。
[Information] ペインにインターフェイス設定が表示されます。
ステップ 2 [Trunk Config] タブをクリックします。
ステップ 3 設定するインターフェイスごとに、[Allowed VSANs] を許可 VSAN のリストに設定します。
ステップ 4 これらの変更を保存する場合は [Apply Changes] をクリックします。保存されていない変更を廃棄する場合は [Undo Changes] をクリックします。
表 7-4 に、トランキング パラメータのデフォルト設定を示します。
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