この製品のマニュアルセットは、偏向のない言語を使用するように配慮されています。このマニュアルセットでの偏向のない言語とは、年齢、障害、性別、人種的アイデンティティ、民族的アイデンティティ、性的指向、社会経済的地位、およびインターセクショナリティに基づく差別を意味しない言語として定義されています。製品ソフトウェアのユーザーインターフェイスにハードコードされている言語、RFP のドキュメントに基づいて使用されている言語、または参照されているサードパーティ製品で使用されている言語によりドキュメントに例外が存在する場合があります。シスコのインクルーシブランゲージに対する取り組みの詳細は、こちらをご覧ください。
このドキュメントは、米国シスコ発行ドキュメントの参考和訳です。リンク情報につきましては、日本語版掲載時点で、英語版にアップデートがあり、リンク先のページが移動/変更されている場合がありますことをご了承ください。あくまでも参考和訳となりますので、正式な内容については米国サイトのドキュメントを参照ください。
この章では、Cisco 3G ワイヤレス WAN サービス、3G ワイヤレス ブロードバンド ネットワークのタイプ、および 3G 高速 WAN インターフェイス カードの他の特徴について説明します。
このマニュアルでは、3G 高速 WAN インターフェイス カード(HWIC)の導入、デバッグ、およびトラブルシューティングについて説明します。このカードは Second Generation Integrated Services Routers(ISR G2)で 3G ワイヤレス ネットワーキング機能を提供します。
このマニュアルは、システム インテグレータ、セールス エンジニア、カスタマー サポート エンジニア、およびネットワーク環境で 3G ワイヤレス サービスの設計および実装を担当するユーザによって使用されることが想定されています。このマニュアルは、3G 環境における経験が豊富なユーザと、データおよび音声ネットワーキングにおける経験が豊富なユーザのギャップを埋めるように作成されています。
HWIC ハードウェアに関する特定の情報については、 http://www.cisco.com/go/3g を参照してください。
3G サービスの各要素を理解するには、ある程度の基本的な知識が必要です。実装するサービスの内容によっては、さらに高度な知識が必要になる場合があります。適切に実装するには、次の分野の知識が必要です。
• 有線インターフェイスの特性など、ネットワークに接続される 3G サービスの動作についての知識
• Cisco IOS ソフトウェア ベースのルータでのデータのプロビジョニング サービス
インストールでは、シスコのダイヤラ インターフェイスとトンネル インターフェイスの設定に関する技術が必要になる場合もあります。
ここでは、3G ワイヤレス ブロードバンド ネットワークに対応した Cisco 3G ワイヤレス WAN サービスとさまざまな特性について説明します。
3G 高速 WAN インターフェイス カード、または HWIC-3G-CDMA および HWIC-3G-GSM を使用すると、高速モバイル ブロードバンドを基盤とした、新しい企業サービスや、小規模から中規模の企業(SMB)サービスを行えるようになります。具体的には、次のようなサービスがあります。
• リモート ブランチのプライマリ/バックアップ WAN 接続:多くの企業および SMB は ISDN を代替テクノロジーに変えることを希望するため、ターゲット サービスはリモート ブランチのバックアップになります。ワイヤレス WAN は、銀行の現金自動支払機(ATM)などの非リアルタイムで低速度から中速度のアプリケーション、または 9600 ビット/秒で動作するシリアル カプセル化されたテクノロジーに対応したプライマリ アクセスとしても機能できます。
• 高速で固定されていない導入:3G HWIC によって実現可能なワイヤレス WAN サービスは、ワークグループなどの固定されていない接続や、見本市および建築現場からの一時的な接続に対応する際に便利です。
• モバイル ディザスタ リカバリ ソリューション :このサービスは、稼働中のファシリティに大規模な停止が発生したときに重要になります。セルラー サービスは、異なるセントラル オフィス経由で代替パスを取得できるため、機能し続けることができます。
3G ワイヤレス データのネットワークは、少なくとも 2 Mb/秒のアクセス速度(必ずしも平均して持続されるスループットではありません)をサポートするブロードバンド ワイヤレス パブリック ネットワークとして定義されています。これらのネットワークは、符号分割多重接続(CDMA)無線アクセス テクノロジーに基づいており、これによって複数の同時アクセスが提供されます。これらのネットワークで使用可能なアクセス帯域幅は、同時 アクティブ ユーザの間で共有されるため、使用可能なすべての帯域幅がこれらのユーザ間で共有されます。
これらのワイヤレス ブロードバンド ネットワークは、元来、主に回線交換音声用に設計された既存のセルラー ネットワークから発展してきました。IP ベースのネットワークと IP データ接続が発展していく中で、ブロードバンド サービスがこれらのネットワークに導入されました。元のネットワークは主に回線交換音声用に設計されているため、このネットワーク パスはブロードバンド IP データのサポートには適していません。オーバーレイ ネットワークは、この機能をサポートするために作成されました。
現在、セルラー ワイヤレス データ ネットワークには、次の 2 種類があります。
• GSM/UMTS:GSM/UMTS のアーキテクチャは、3GPP 標準組織によって定義されています。この標準セットには、GPRS、EDGE、HSPA および HSPA+ エアー インターフェイスが含まれています。
• CDMA2000 テクノロジー:CDMA2000 テクノロジーのアーキテクチャは、3GPP2 標準組織によって定義されています。この標準セットには、1xRTT、EvDO-Rev0、および EvDO-RevA エアー インターフェイスが含まれています。
このマニュアルでは、 GSM という言葉は、3GPP 標準でカバーされている無線送信テクノロジーを示すために使用されます。 CDMA という言葉は、3GPP2 標準でカバーされている無線送信テクノロジーを示すために使用されます。UMTS と CDMA2000 は両方とも CDMA 変調テクノロジーを使用しますが、CDMA より UMTS のほうがより広い帯域幅を使用するため、W-CDMA と呼ばれています。CDMA20000 は UMTS で使用される 5.0 MHz の帯域幅ではなく、1.25 MHz の帯域幅で動作します。
CDMA のブロードバンド ワイヤレス ネットワークは Qualcomm CDMA-2000 テクノロジーに基づいています。このネットワーク アーキテクチャは既存の IETF プロトコルを最大限に活用するため、IETF 中心型です。GSM のブロードバンド アーキテクチャは既存のいずれかのプロトコルを使用するのではなく、独自のプロトコルの一部を使用するため、IETF 中心型ではありません。
3G HWIC は HSDPA および EV-DO Rev A をサポートします。図 1-1 には、CDMA2000 テクノロジーと GSM/UMTS テクノロジーが示されています。
図 1-1 CMDA2000、GSM、および CDMA テクノロジーのパフォーマンス特性
スループットはセル セクターごとと、搬送波周波数ごとに共有されます。 表 1-1 には、EVDO Rev A、HSDPA、および HSPA のセクター ダウンリンクおよびアップリンクごとの合計論理スループットの値が示されています。
表 1-1 3G HWIC チップセットのセクターごとの合計論理スループット
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実際のスループットは、当該時点でのネットワークの状態、Received Signal Strength Indicator(RSSI)、および ISP ネットワークのセルラー バックホール ファシリティによって異なります。
3G セルラー ネットワークの遅延は、有線ネットワークの場合より長くなります。これは、ネットワークの状態によって変化し、エアー リンクおよび Radio Access Network(RAN)では最大で 100 ミリ秒になることがあります。下の表には、テスト段階で確認されたエンドツーエンドのスループットと遅延が示されています。
表 1-2 テスト段階で確認されたエンドツーエンドの遅延とスループット
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WiFi、イーサネット、DSL および 3G のセルラーは、すべて共有アクセス テクノロジーで表示されます。同じセルおよびセクターで無線リソースを使用している PC カード ユーザや他の 3G HWIC など、他のデータ サブスクライバによって、3G HWIC のパフォーマンスに影響が及ぼされる可能性があります。
RSSI は、入力信号の強度を測定する回路です。この基本回路は、RF 信号を選択し、信号の強度に応じて出力を生成するように設計されています。レシーバが最も弱い信号を選択する機能を、レシーバ感度と呼びます。レシーバ感度が高くなるほど、パフォーマンスは高くなります。出力電圧に基づいて信号強度を測定する回線があります。信号強度が強い場合は出力電圧が高くなり、信号強度が弱い場合は出力電圧が低くなります。
セル内を移動しているモバイル ハンドセットは、変化し続ける信号強度を記録します。信号強度は、低速フェージング、高速フェージング、および搬送波対干渉波比(C/I 比)の低下によって生じる他の信号からの干渉によって影響を受けます。C/I 比が高ければ、高品質の通信を行うことができます。大部分のリンクで電力制御を介した最適な電力レベルを使用することで、セルラー システムで高い C/I 比が実現されます。搬送波電力が高すぎると、過度の干渉波が作成され、他のトラフィックの C/I 比が低下し、無線サブシステムのトラフィック容量が下がります。搬送波電力が低すぎると、C/I は低くなり過ぎ、Quality of Service(QoS)の目標が満たされなくなります。理想的には、C/I 比は可能な限り高くする必要があり、受信するパイロット エネルギー(Ec)と合計受信エネルギーまたは合計パワー スペクトル密度(Io)値の比率(Ec/Io)は、可能な限り低くする必要があります。シスコでは許容値は決定していません。これらの値は、セルラーのキャリアによって決められています。Ec/Io 値が高く、Received Signal Strength Indicator(RSSI)値が低い状況では、より最適な信号特性を得る方法を決定するためのサイト調査が必要です。
これらのパフォーマンス特性により、3G HWIC のスイート スポットは非リアル タイムで、サブ 512Kbps アプリケーションです。ネットワークが拡大して、遅延が減少し、QoS を使用できるようになると、VoIP などのリアルタイム アプリケーションを実行できるようになります。
現在、エアー リンクおよび Radio Access Network(RAN)QoS は実稼働セルラー ネットワークでは使用できません。このため、従来の IP QoS は ISR および 3G HWIC インターフェイス上で使用できますが、エアー リンクへのマッピングは行われません。Cisco IOS QoS 機能を活用して、アプリケーション エクスペリエンスを向上させることができます。輻輳管理、輻輳回避、ポリシングおよびシェーピング、Modular QoS CLI(MQC)などは、すべて有用な技術です。詳細については、以下を参照してください。
http://www.cisco.com/en/US/partner/docs/ios/isg/configuration/guide/isg_mqc_ipsession_ps6922_TSD_Products_Configuration_Guide_Chapter.html
3G は共有アクセスを使用するため、 show interface を発行して表示される帯域幅(BW)の出力フィールドには、使用可能な論理帯域幅(EV-DO Rev A の 1.8Mbps など)が反映され、実際の帯域幅は反映されません。瞬間的なダウンリンクのネットワーク速度は 2 Mbps、または 300Kbps になる可能性があります。