このドキュメントでは、マルチリンク PPP(MP)、および MP バンドルの命名基準の選択方法について説明します。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの情報は次のソフトウェア バージョンに基づいています。
Cisco IOS® Software リリース 11.3(4)
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
マルチリンク PPP では、名前の付いた仮想リンクを使用することにより、デバイスから 1 つの宛先に複数のポイントツーポイント データリンクを経由してデータを送信できます。MP 接続の最大帯域幅は、コンポーネント リンクの帯域幅の合計に等しくなります。MP は、PPP をサポートしているすべてのインターフェイスで設定できます。MPについての詳細は、RFC 1990 を参照してください。
Cisco IOS ソフトウェアによって、マルチリンク バンドル名が生成されますが、この名前は、最初に PPP の認証名、次にエンドポイント識別子に基づいて決まります。Cisco IOS をデフォルトの状態で使用すると、同じユーザ名を使用しているクライアントのリンクはすべて、1 つの MP バーチャル コネクションにまとめてバンドルされます。MP を使用するクライアントでは、各接続が、同じユーザ名を使用しているアクセス サーバによって認証され、同じ MP バンドルに追加されます。すべてのクライアントが一意のユーザ名を使用してアクセス サーバに接続する場合、この仕組みは正しく機能します。しかし、複数のクライアントが MP で同じユーザ名を使用すると、別のクライアントによって開始されたバンドルに誤ってクライアントが追加されてしまう場合があります。また、双方向のダイヤル環境でシスコ製以外のルータが一緒に使用されている場合にも、問題が発生します。シスコ製以外のルータでは、バンドルの名前に認証名を使用しませんが、シスコ製のルータでは、認証名を使用するため、異なる 2 つのバンドルが作成されてしまいます。
複数のクライアントが同じユーザ名を使用して MP 接続を開始する環境や、シスコ製以外のルータを一緒に使用している場合は、バンドル名の作成順序を管理する必要があります。最初にエンドポイント識別子、次にユーザ名(またはこれら両方)に基づいて、バンドル名を作成するようにアクセス サーバを設定する必要があります。エンドポイント識別子は、パケットを送信するシステムを識別するもので、このリンクのピアが別の既存リンクのピアと同じものであるかどうかを Network Access Server(NAS; ネットワーク アクセス サーバ)に通知します。クライアントごとに一意のエンドポイント識別子を持っているため、一意な 1 つの MP 接続にバンドルされるのは、同一のクライアントからの複数のリンクだけです。たとえば、2 台の PC クライアントが、同じユーザ名を使用してアクセス サーバへのマルチリンク接続を開始する場合を考えます。マルチリンク バンドル名が、最初にエンドポイント識別子、次にユーザ名かこれら両方に基づいて設定される場合、NAS では、バンドル名にエンドポイント識別子を使用することによって、各クライアントからのリンクを正確にバンドルできます。このバンドル名は、パケットを送信するピア システムごとに一意の名前です。
注:リンク上の認証が一方向でのみ行われると、ピアの認証が行われず、ローカルホストがChallenge Handshake Authentication Protocol(CHAP)を使用して自身を認証するという要件がある場合、CHAPチャレンジでピアから提供されるユーザ名はがです。
multilink bundle-name {authenticated |エンドポイント | both}グローバルコンフィギュレーションコマンドを使用します。さまざまな必要キーワードを使用して、マルチリンク バンドルの作成に使用する基準を選択できます。キーワードには次のものがあります。
authenticated:ピアの認証名をバンドル名として使用します。
endpoint:ピアのエンドポイントの識別名をバンドル名として使用します。この識別子は、送信システムに接続されている機器を示すもので、さまざまな形式で表示されます。詳細については、RFC 1990 を参照してください。
both:ピアの認証名とエンドポイントの識別名をバンドル名として使用します。
注:マルチリンクバンドル名を割り当てる基準を変更した場合は、変更後のコールだけが影響を受けます。
バンドルの名前に認証名を使用するには、authenticated キーワードを使用します。このオプションでは、複数のクライアントが同じ認証ユーザ名を使用しているケースはサポートできません。
bobslake-nas-01(config)#multilink bundle-name authenticated
注:このオプションはデフォルトであり、実行コンフィギュレーションには表示されません。
MP バンドル名は、次のいずれかのオプションで作成されます。
クライアントの認証名
エンドポイント識別子(リンクが認証されていない場合)
発信者番号(認証名とエンドポイント識別子のいずれも提供されていない場合)
バンドル名にエンドポイント識別子の定義を使用するには、endpoint キーワードを使用します。このオプションでは、クライアントのユーザ名とは無関係なバンドル名が割り当てられるため、複数のクライアントが同じ認証ユーザ名を使用しているケースをサポートできます。この endpoint キーワードは、双方向のダイヤル環境でシスコ製以外のルータが一緒に使用されている場合などに使用します。MP バンドルの名前にエンドポイント識別子を使用する方法は、クライアントがユーザ名で認証されていない状況で役に立ちます。
bobslake-nas-01(config)#multilink bundle-name endpoint
endpoint キーワードを使用した場合、デフォルトの authenticated キーワードのときと命名順が逆の順番になります。
マルチリンク PPP のバンドル名は、次のいずれかのオプションを使用して作成されます。
クライアントのエンドポイント識別子
認証名(エンドポイント識別子が提供されていない場合)
発信者番号(認証名とエンドポイント識別子のいずれも提供されていない場合)
認証ユーザ名とエンドポイント識別子の両方を使用してバンドル名を設定するには、both キーワードを使用します。このオプションでは、バンドル名にクライアントのユーザ名とエンドポイント識別子の両方が含まれるため、複数のクライアントが同じ認証ユーザ名を使用しているケースをサポートできます。このオプションでは、クライアントのユーザ名とエンドポイント識別子が表示されるため、マルチリンクのクライアントが NAS への接続に使用するユーザ名を簡単に参照できます。
bobslake-nas-01(config)#multilink bundle-name both
MP バンドル名は、次のいずれかのオプションで作成されます。
認証名とエンドポイント識別子(たとえば、fred/myrouter)
認証名(エンドポイント識別子が提供されていない場合)
エンドポイント識別子(リンクが認証されていない場合)
発信者番号(認証名とエンドポイント識別子のいずれも提供されていない場合)
アクティブ状態のマルチリンクのバンドルに関する情報を表示したり、マルチリンク接続を確認するには、show ppp multilink コマンドを実行します。上記の各キーワードを使用した show ppp multilink コマンドの出力例は、次のとおりです。
bobslake-nas-01#show ppp multilink Virtual-Access3, bundle name is clearlake-lan-01 !--- Bundle name is the authenticated name of the user !--- on the peer device. 0 lost fragments, 0 reordered, 0 unassigned, sequence 0x2A/0x20 rcvd/sent 0 discarded, 0 lost received, 1/255 load Member links: 2 (max not set, min not set) Async6 Async8
bobslake-nas-01#show ppp multilink Virtual-Access1, bundle name is d04120c1c653f603144321c191370000 !--- Bundle name is the endpoint discriminator !--- as determined by the peer device. 0 lost fragments, 0 reordered, 0 unassigned, sequence 0x7/0x0 rcvd/sent 0 discarded, 0 lost received, 1/255 load Member links: 1 (max not set, min not set) Async36 Virtual-Access2, bundle name is clearlake-lan-01 !--- Bundle name is the endpoint discriminator !--- (which in this case is the same as the username). 0 lost fragments, 0 reordered, 0 unassigned, sequence 0x0/0x0 rcvd/sent 0 discarded, 0 lost received, 1/255 load Member links: 1 (max not set, min not set) Async30
bobslake-nas-01#show ppp multilink Virtual-Access1, bundle name is clearlake-lan-01/d04120c1faa0fb0364f01fc191370000 !--- Bundle name is both the authenticated username !--- and the endpoint discriminator. 0 lost fragments, 0 reordered, 0 unassigned, sequence 0x26/0x3B rcvd/sent 0 discarded, 0 lost received, 1/255 load Member links: 2 (max not set, min not set) Async37 Async39 Virtual-Access3, bundle name is clearlake-lan-01/clearlake-lan-01 !--- Bundle name is both the authenticated username !--- and the endpoint discriminator. 0 lost fragments, 0 reordered, 0 unassigned, sequence 0x0/0x0 rcvd/sent 0 discarded, 0 lost received, 1/255 load Member links: 1 (max not set, min not set) Async33
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
09-Sep-2005 |
初版 |