このドキュメントでは、到達可能性キャッシュがデータリンク スイッチング(DLSw)でどのように動作するか、および DLSw 回線のトラブルシューティングについて説明します。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、「シスコ テクニカル ティップスの表記法」を参照してください。
DLSw(データ リンク スイッチング)到達可能性 キャッシュ エントリに関する次のフローチャートを 参照してください。
DLSw 到達可能性キャッシュ エントリは、次の 2 つのタイマーによって制御されます。
VERIFY タイマー
到達可能性(DELETE)タイマー
この項では、以後、デフォルトの操作方法について説明します。
キャッシュに存在しないアドレスに関して、WAN から CANUREACH(CUR)が着信すると、トークン リング ネットワーク上で、デフォルトですべてのローカル Data Link Control(DLC)に、テスト フレームが Single Route Explorer(SRE)として送信されます。MAC アドレスまたは Network Basic Input/Output System(NetBIOS)名が、ステータス SEARCHING でキャッシュに入力されます。これに対する最初の応答があると、キャッシュに情報が追加され、そのアドレスまたは名前のステータスが FOUND に変更され、VERIFY タイマーおよび DELETE タイマーが起動されます。新しい応答が着信すると、応答はキャッシュに(最大 4 つまで)追加されます。 それ以外の場合、状態は FOUND のままであり、タイマーはリセットされません。
VERIFY タイマーが満了した時点(デフォルトで 4 分)では、何の動作も行われません。 show dlsw reachability コマンドを使用した場合、そのリソースに対する新しい CUR を受信していなければ、4 分を超過してもそのエントリは引き続き FOUND です。ただし、そのリソースに対する CUR が 1 つでもあれば、VERIFY ステートになり、VERIFY タイマーが満了したことが明らかになります。
この時点では、以前にリソースを学習したインターフェイス(またはインターフェイスのグループ)に対してのみ、テストが転送されます。その後、すべての到達可能性情報が削除されます。最初の応答が返されると、状態は FOUND に戻され、ポート情報が再びキャッシュに追加され、VERIFY タイマーがリセットされます。DELETE タイマーには影響はありません。最初の応答の後、新しい応答があれば、ポート情報がキャッシュに再び追加されます(代替パス)。 ただし、状態は FOUND のままであり、どちらのタイマーも影響されません。
VERIFY 動作の一環として送信されたテストに対して、エクスプローラのタイムアウト期間内に応答がなければ、キャッシュ エントリが削除されます。これはエントリが自動的に削除される可能性がある、最初のポイントです(到達可能性が最初に学習された時間 + VERIFY タイマー + x + エクスプローラ タイムアウト(ここで x は、VERIFY タイマーが満了してからリソースに関する次の CUR を受信するまでのインターバルです)。
DELETE タイマー(デフォルトで 16 分)が作動している間にデバイスが学習され、すべての VERIFY 動作に合格した場合には、そのデバイスは DELETE タイマーが満了する時点で自動的に削除されます(VERIFY タイマーの場合は、次のテストを待ってから削除します)。 これは、既存のリソースへの新しいパスを学習する時間を十分に確保することを目的としています。もし VERIFY しか行われないのであれば、キャッシュに有効なパスが最低 1 つある限り、新しい代替パスが学習されることはありません。
回線が確立される時点で、その回線には必要な到達可能性情報がすべて揃っています。したがって、その他の到達可能性エントリの出入りがあっても、既存の回線にはまったく影響がなく、新しい回線にのみ影響します。2つのリソース間のアクティブな回線(およびセッション接続)について、到達可能性 情報がなくなることが十分にあり得ます。これは別に問題ではなく、従来のシステム ネットワーク アーキテクチャ(SNA)環境のように、デバイス同士が接続したにもかかわらず以降のテスト フレームが送信されないという例外的な状況ではなく、むしろ正常な状況であると考えられます。
DLSw の到達可能性の問題をトラブルシューティングする場合は、show dlsw reachability 特権 EXEC コマンドを使用してください。
show dlsw reachability [[group [value] | local | remote] | [mac-address [address] | [netbios-names [name]]
group ???(オプション)グループ到達可能性キャッシュの内容のみを表示します。
value ???(オプション)到達可能性チェックのグループ番号を指定します。指定したグループのグループ キャッシュ エントリだけが表示されます。指定できる範囲は1~255です。
local ???(オプション)ローカル到達可能性キャッシュの内容のみを表示します。
remote ???(オプション)リモート到達可能性キャッシュの内容のみを表示します。
mac-address ???(オプション) MACアドレスのDLSw到達可能性のみを表示します。
address ???(オプション)到達可能性キャッシュで検索するMACアドレスを指定します。
netbios-names ???(オプション)NetBIOS名のDLSw到達可能性のみを表示します。
name ???(オプション)到達可能性キャッシュで検索するNetBIOS名を指定します。
このコマンドの出力の詳細については、次の出力例の他に、「DLSw+ コンフィギュレーション コマンド」を参照してください。
Router# show dlsw reachability DLSw MAC address reachability cache list MAC AddrstatusLoc.peer/portrif 0000.f641.91e8SEARCHINGLOCAL !--- CUR is received from the WAN for an address that is not in the cache. !--- TEST frames are sent to all local DLCs (SRE by default, on Token Ring). !--- The MAC address or NETBIOS name is entered into the cache, with the !--- status SEARCHING. 0000.f641.91e8VERIFYLOCAL !--- The first CUR that is received after the VERIFY timer expires (default 4 !--- minutes) causes the cache entry to change to the VERIFY state. A directed !--- test poll is sent to only that interface or group of interfaces from which !--- the cache entry was previously learned. All reachability information is !--- deleted. !--- The first response back causes the cache entry to be reinstated in the !--- FOUND state. The VERIFY timer is restarted, but the DELETE timer is !--- unchanged. Additional responses to CUR are cached (as alternative paths), !--- but the cache entry state remains FOUND, and the timers are unaffected. 0006.7c9a.7a48FOUNDLOCAL Tokenring0/00CB0.0011.3E71.A041.0DE5.0640 !--- Each entry includes either the port???if FOUNDLOCAL???or the DLSw peer IP !--- address???if FOUNDREMOTE. !--- The first response to the TEST frame that is received is entered into the !--- cache, and the status of the address or of the name found is changed to !--- FOUND. The VERIFY and DELETE timers are started. !--- Additional responses to TEST frames are cached (up to four) and do not !--- affect FOUND status or timers. 0800.5a4b.1cbcSEARCHINGREMOTE !--- The TEST frame is received on the local interface. CUR sent to the WAN. !--- The MAC address or NetBIOS name is entered into the cache, with a status !--- of searching. 0800.5a8f.9c3fFOUNDREMOTE10.1.1.5/008B0.A041.0DE5.0640 !--- Each entry includes either the post???if FOUNDLOCAL???or the DLSw peer IP !--- address???if FOUNDREMOTE. !--- Omit the first four digits and then use the 3-digit (ring) and 1-digit !--- (bridge) numbers to trace the source of the MAC address. !--- In this example, the MAC address has come from these values: !--- ring = A04, bridge = 1 !--- ring = 0DE, bridge = 5 !--- ring = 064, bridge = 0
その他の状態は次のとおりです。
UNCONFIRMED ???Stationが設定されていますが、DLSwでは確認されていません。dlsw icanreach コマンドは、リモート到達可能性キャッシュにこのステータスのエントリを追加します。
NOT_FOUND ???ネガティブキャッシングがオンで、ステーションがクエリに応答していません。
注:ロードバランシングは、FOUNDキャッシュエントリに対する単純なラウンドロビンです。エンド ステーションが 16 分(sna-cache-timeout)後に接続する場合、必ずしもロード バランスするとは限りません。ラウンド ロビンは、キャッシュ エントリが更新されるたびに再起動されます。ロード バランシングを向上させるために、sna-cache-timeout を増加します。
転送されたテスト ポールに対してエクスプローラのタイムアウト期間内に応答がなければ、キャッシュ エントリは削除されます。これはエントリが自動的に削除される可能性がある、最初のポイントです(到達可能性が最初に学習された時間 + VERIFY タイマー + x + エクスプローラ タイムアウト(ここで x は、VERIFY タイマーが満了してからリソースに関する次の CUR を受信するまでのインターバルです)。 次は DLSw 到達可能性キャッシュのタイマーです。
sna-cache-timeout???:MACまたはSAPロケーションキャッシュエントリが廃棄されるまでの時間(ローカルおよびリモートの両方)。 デフォルトは 16 分間です。
sna-verify-interval???:キャッシュエントリの作成から古いとマークされた時間までの間隔。検証のためにダイレクトサーチが送信されます。デフォルトは 4 分間です。
sna-explorer-timeout???:Cisco IOSソフトウェアがリソースを到達不能としてマークするまでの、エクスプローラ応答を待機する時間の長さ。デフォルトは 3 分です。
explorer-wait-time???:すべてのステーションが自分に送信された探索パケットに応答するのを待機する時間。
DLSw 回路が確立されると、到達可能性キャッシュでエントリの影響を受けることはなくなります。ほとんどの SNA セッションは 16 分よりも長い時間確立された状態なので、到達可能性キャッシュにエントリはありません。
dlsw icanreach コマンドを発行してリモート到達可能性キャッシュにスタティック エントリを追加し、このアドレスに対する WAN 経由のポーリングを防ぐことができます。このコマンドを実行すると、リモート DLSw ピアの到達可能性キャッシュで確認されるエントリは、UNCONFIRMED 状態になります。
clear dlsw reachability コマンドを発行して、DLSw 到達可能性キャッシュ全体を消去できます。
改定 | 発行日 | コメント |
---|---|---|
1.0 |
28-Jan-2008 |
初版 |